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このページでは、デンテツ関係などの大きなできごとを詳細に紹介します。
vol.1 シート剥がし
2007.3.18〜4.20作成
3月18日朝から夕方まで、かぼちゃ電車保存会の皆さまが、保存車両の冬期保護用シート剥がしをされました。私も手伝いに行ってきまして、写真も100枚ほど撮りました。
一口に「シート剥がし」といっても、簡単なことではありません。新潟名物の強風にシートが飛ばされないようにギッチギチに結ばれた結び目は、3両合計200箇所くらい。それを屋根に上がったり床下に潜ったりして、かじかんだ素手を真っ黒にさせながら一つ一つほどいていき、それで剥いだシート・ヒモなどは来年も使えるように丁寧に片付ける…。大変な作業なのです。
その様子をご覧ください。ちなみに私は初参加です。天気は、くもり時々雪、といったところです。
シートの状況
午前9時前に到着。
作業開始前の状況。
モハ11。直角に何本もヒモが通っている。モワ51も同様
キ116。起伏に富んだ形状だけに、ヒモは直角ではない
昨年11月、このシートを掛ける様子が新潟日報の記事になりましたが、なんでも模型を使って綿密に計画を立てるとか。その必要性は、この後わかってきます。
まずは側面のヒモほどき
午前9時前、先に到着した4名くらいで作業開始。
まずは側面のヒモをほどきます。側面に十字にヒモが通っているのは上の写真でわかりますが、その交点全てを、別の短いヒモで固定しています。
交点の結び方は、"まず交点を一周、そして団子結び、最後に蝶々結び"が多数派だった
蝶々結びはすぐにほどけるので簡単でしたが、その後の団子結びがほどけない!ここでさっそく両手にはめていた軍手を外す羽目に。それでもほどけなかったので、渡辺さんが「ほどけない時は切ってもいいから」と貸してくれたカッターを、刃を出さずにこじ入れて無理やりほどきました。こういうときに"もったいない"の性分が出るんです…。
数人でやっていたモハ11のホーム側のヒモほどきが終わって、私がモワ51のホーム側のヒモをほどいているうちに、集合時刻の10時に到着した会員さん方がモハ11のヒモをおおかたほどいていました。
ヒモが取られたモハ11
難関!床下のヒモほどき
その後またモワ51のホーム側のヒモほどきに戻って、終わったところで非ホーム側へ。ちなみにキ116はとりあえず作業保留のよう。あとはどこをほどけばモハ11のシートが剥がせるのか見回すと、床下に回っているヒモがほどく作業中だったので、手伝いに床下へもぐりました。なお、作業する方たちは汚れてもいい服装(作業服・古着など)をしていて、私も上下とも父のお古でした。
もぐろうとたところ、肩に掛けたカメラがそれを阻むので(私に恨みでもあるのか)、本屋(ほんおく)反対側のホームに置いて(私がカメラを身から離したのはこのときだけ)再度挑戦。かなりの痩せ型の私でもちょっときついくらい。
モハ11の床下では、シートの縁と反対側の縁の間をヒモで結んでいるほか、それを固定するために床下機器にくくりつけられたヒモがありました。数としてはそんなに多くはありませんが、ここは電車の床下、身動きもままならない状態でヒモを外すのは大変でした。特に台車周辺。腕が2本やっと入るような隙間に頭を押し込み、車輪に結ばれたヒモをほどきました。ほどくのも大変ですが、これを結んだ方はすごい。保存会会長さんの「苦労の結晶」という言葉の意味が実感できました。どこにヒモで固定するかなど、試行錯誤が多かったようです。
床下を見渡す限り残っているヒモはないので、床下から出てカメラを再び肩へ。この頃にはモハ11のシートを剥がす準備がほぼできていました。
さながら"のっぺらぼう"のモハ11
21日追記
いよいよシート剥がし
そしていよいよモハ11のシートを剥がします。非ホーム側からシートを引っ張って、ホーム側の縁が屋根まで来たところで会長さん方が屋根に上って、シートが動くように補助していました。で、シートが落ちる間際が下の写真です。
シートが落ちる間際のモハ11
いや驚いたでしょう、シートの中からシートが出てきましたよ。実はこれ、会長さん曰く「下着のようなもの」だそうで、これを着けたと着けないでは大違いなのです。以前はシートを一重にしていたそうですが、そうするとシートと塗装面が風でこすれ、粉が出てそこは白っぽくなるのです。実際、モワ51は今シーズンも一重シートだったので、結構粉が出ていました。ただ、拭くと取れるので、一重シートの問題は塗装面の劣化でしょう。
それともう1つ、出っ張っていて、かつ外せない機器類は、プチプチシートやダンボールで保護してあるのが写真を見てわかるかと思います。
この後、外したシートを畳む作業です。モハ11の外側のシートは20×10mの一枚もの!特注品だとか。
モハ11のシートを広げたところ
この状態から画面向って右側に5回くらい折って、棒状になったものを、空気抜きをしながら縦方向に折ります。そして最終的に下の写真のようになりました。
モハ11のシートを畳んだところ
随分小さくなるものです。でも、新品で届いた時はもっと小さかったとか。何キロぐらいあるのか持ってみるのを忘れたのが残念…。
4月19日追記……ここからちょっと駆け足。。。
この後、モハ11の床下機器などの保護具を外して、「下着」のブルーシートを剥がしました。このシートも、風で動かないようにしっかりと床下に結び付けてあるので、再び床下潜り…。狭いところは本当に大変です。
ホーム側も、床下に潜ってほどく
これで、モハ11はあとパンタグラフ・避雷器をつければ完成、というところまで来ました。
そのあとはモワ51のシート剥がし。51号は「下着」のブルーシートが無いので、銀色のシートを剥がせば姿が拝めました。しかし、前述の通り、白い粉が薄々と出ていました。51号も、床下機器などの保護具を取れば、パンタグラフ・避雷器・前照灯・後尾灯(モハ11と違い、一体型ではないため取外し)の取付で完成です。
そして最後はキ116。こちらも一重シート。外側のヒモはいつの間にかなくなっていました。
ガムテープを剥がして、いよいよシート剥がし
シートが剥がれると、精巧な土台が姿を現しました。キ116は、他の2両と違って凸凹なので、そのままではシートをかぶせるのが難しいのでしょう、ラッセル部分には下の写真のような骨が組まれていました。
前面の様子。出っ張りに合わせて骨が組まれている
ここでお昼休憩となりました。持参の弁当を食べて、しばしの休息。その後、思いがけない記念品をもらって大満足。
午前中の作業の成果
キ116の骨組み撤去
13時過ぎに作業再開。引き続き、キ116の土台外しです。今度は屋根のエアータンク上を平らに保つための板の解体。
シートがピンと張るように付けられた屋根上の板
エアータンクに固定されたヒモをほどいて、そのまま下ろすのかと思いきや、ヒモをほどかずに板の上に乗って、ドライバーで解体が始まりました。そのままだと保管場所に入らないとのこと。角材の骨組みの上に、塩化ビニールの波板がネジ止めされていて、今はこの塩ビ波板を外しているところです。
作業開始10分後に、強力な助っ人、電動ドライバー登場!とはいっても1台。それでも、これのあるとなしでは速度が格段に違うはずです。この頃から、常時5人体制でネジ外し。
塩ビ波板外し作業開始40分後、エアータンクに固定されたヒモもほどかれ、とうとう最後の波板が外されました。
地上に下ろされる骨組み
下ろされた骨組みは、2分割されて、もとの保管場所に戻ったようです。
出っ張る部品を取り付け
あとは、避雷器・パンタグラフ(左記2つはモハ11・モワ51のみ)・前照灯(モワ51・キ116のみ)・後尾灯(モワ51のみ)の取り付けだけとなりましたが、パンタグラフは、ボルトが腐食して新品と交換しなければないので、後日渡辺さんがつけることになっています。
モワ51のパンタ土台。数日間はこの姿
キ116の前照灯取り付け。配線に至るまでしっかり復元
モハ11の避雷器。外す際に車号をチョークでメモしてある
このモハ11、1つのベンチレーターの土台が大変なことになっていました。こういうところも直さなければないわけで、保存というのは大変な作業です。
15時半頃に作業終了。保存会の皆さま、本当にお疲れ様でした。
4月20日追記
後日 パンタグラフ取り付け
パンタグラフ(以下パンタと言います)は、前述の通りボルトが腐食していたので、ボルトを買ってからの取り付けとなっていました。
そしてシート剥がしから5日経った3月23日、渡辺さんが朝からパンタ取り付けをされました。そこで合流して、お昼前後は、もう日がないバスの「ブルドック」、弥彦営業所G391-Mの定期仕業に乗りに行きました。そしてその帰り、取り付けの難所が残っているという月潟駅へ。
モハ11のパンタ。モワ51の写真は下に
待合室の中で出番を待つパンタの部品
パンタの部品も、避雷器などと同じように、元々付いていた車両の車号をメモしてありますが、パンタのパイプ状の骨組みには、「付いていた車号・枕木方向(線路に対して垂直)の位置・線路方向の位置」と、これだけ細かい情報がガムテープに書かれて貼り付けられていました。部品数も結構多いです。
モワ51のパンタ。左の骨組みに付いているガムテープに取り付け位置がメモされている
作業開始。まずはモワ51から。最初に部品をホームから51号の屋根に乗せたのですが、この作業もなかなか大変。いくら分解してあるとはいえ、結構な重さです。私が屋根で待っていて、渡辺さんが上げたのを受け取る、という形を採りましたが、渡辺さんは朝、これを一人でやったことになるわけで、さぞ大変だったことでしょう。
朝、渡辺さんが取り付けたところを見ると、ピカピカのボルトで留めてあり、近くには腐食して細くなっているボルト。このボルト、何年使ったのでしょう。長い間お疲れ様。
モワ51のパンタ下部。取り付けには新品のボルト、右には腐食したボルト
しばらくの間、渡辺さんの作業を見守りました。というのも、私は作業服を持って来なかったので、やたらと油まみれの部品にさわれなかったのです。結果からすれば、作業服、持って来ればよかった。
時たま訪れる私の出番は、2人掛かりでないとできない作業。またこれが大変なんです。パンタのバネを抜くと面倒なことになるそうなのでバネを抜かずに作業したのですが、パンタを通常ありえない形にさせなければ部品がはまらないのです。そのときにバネも伸びた状態なので、部品をはめるとなれば、さながらバネとの力比べと化します。
その作業、あまり運動しない、しかも体重が軽い私にとってはかなりの難儀で…。架線をきゃたつで持ち上げておいて、私がパンタの下骨組みを押さえていて、渡辺さんが上骨組みを押し入れる、という構図。押し入れたあとにも、関節部分に固定具(固定と言うよりは軟骨みたいな役目をします)を押し込むという作業が待っていて、これがなお大変。力を込めた状態で、上と下の穴が合うようにして、そこに固定具を押し込むのですが、少しでもずれているとまず入らないわけで、もし入ったとしても、バールで叩かないと入っていかない…。
実はこの作業、渡辺さんが全部一人でやったことがあったそうで、まるで「サバイバル」だったとのこと…。人間、できないことは何もないのかもしれません。
モワ51のパンタ中部。右に見えるピンが、前述の固定具
この後、一番上に集電部品を取り付けて、だいたい完成。あとの細かい作業は、後日渡辺さんがするとのこと。
次はモハ11。モハ11もモワ51も、ひいてはデンテツ所属の歴代全車両が同じパンタを付けていたので、工程は全く同じです。モワ51のときに撮らなかった工程の写真だけ載せます。
モハ11のパンタ上部取り付け作業。これから例の「力比べ」
モハ11の場合、モワ51に比べて架線が上にあるので、架線が邪魔をせずある程度楽に作業ができます。
モハ11のパンタ上部。集電具を付ければだいたい完成。
出番がないときに渡辺さんから頼まれた作業がありました。それは、コード取り付け。パンタの関節部にコードがぶら下がっていましたが、それの片方を本来の場所に付ける作業です。材質から見ると、ここに電気を通すようです。簡単かと思いきや、どことどこの間にコードを通そうか考えながらやっていると、統一感がなくなってしまいました…。それぞれのコードの曲がりクセを見ながらやったわけですから、間違っていないことを願っていますが…。
モハ11のパンタ中部。左は最難関の「関節」固定具、右がコード
集電具を付けて、今日の作業は完了。渡辺さん、お疲れ様でした。
モハ11のパンタ。架線が高いので目一杯上がっている
モワ51のパンタ。架線が低いのでかなり下がっており、11号と同型品とは思えない
vol.1 シート剥がし 完